インドネシアで採用活動を行っている企業では、一つの求人に多くの応募が集まることがあります。応募者が増えることは企業にとって良いことですが、その一方で、人事・採用担当者には、履歴書・職務経歴書(CV)の確認、候補者への連絡、面接日程の調整、選考状況の管理など、多くの業務が発生します。複数の求人を同時に募集している場合、Excelやメール、WhatsAppなどで候補者情報を個別に管理していると、「どの候補者がどの選考段階にいるのか分からない」「候補者への連絡が漏れてしまった」といった問題が起こることもあります。こうした採用業務を効率化するために利用されているのが、ATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)ですATSを活用することで、求人管理、応募者情報、書類選考、面接、選考結果などを一つのシステムで管理できます。
本記事では、インドネシアで採用活動を行う企業向けに、ATSとは何か、主な機能や導入メリット、人事管理システム(HRIS)との違いについて解説します。
ATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)とは?
ATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)とは、企業の採用活動をデジタルで管理・効率化するためのシステムです。主に人事担当者や採用担当者が利用し、求人の作成・公開から応募者管理、書類選考、面接、内定まで、採用プロセスを一元管理します。
例えば、採用活動では、
- 求人情報の管理
- 応募者情報の管理
- 履歴書・職務経歴書(CV)の管理
- 書類選考
- 面接日程の調整
- 面接評価の記録
- 選考ステータスの管理
- 候補者への連絡
- 内定・オファー管理
など、多くの業務が発生します。これらをExcel、メール、チャットなど複数のツールで管理すると、採用担当者の負担が大きくなるだけでなく、情報の更新漏れや候補者への連絡漏れが発生する可能性があります。ATSを利用すれば、これらの採用情報を一つのシステムへ集約できるため、採用担当者だけでなくHiring Managerなどの関係者とも選考状況を共有しやすくなります。
ATSの主な機能
ATSには、採用業務を効率化するためのさまざまな機能があります。搭載される機能はシステムによって異なりますが、代表的なものは以下のとおりです。
1. 求人管理
募集職種、Job Description、勤務地、給与条件、採用人数などの求人情報を一元管理できます。複数のポジションを同時に採用している企業でも、「どの求人で何名採用するのか」「現在何名が選考中なのか」を確認しやすくなります。
2. 応募者管理
氏名、連絡先、職歴、学歴、応募職種、履歴書・職務経歴書など、候補者に関する情報を一元管理します。
候補者ごとに、応募 → 書類選考 → 面接 → 最終面接 → オファー → 採用などのステータスを設定することで、現在の選考状況を把握できます。
3. 履歴書・職務経歴書の検索・スクリーニング
ATSによっては、履歴書・職務経歴書(CV)に記載された職歴、スキル、学歴、キーワードなどを検索・抽出できます。これにより、大量の応募があった場合でも、求人要件に関連する候補者を効率的に確認できます。
4. 面接管理
候補者との面接日程や面接官を管理し、選考スケジュールを共有できます。また、面接官が評価やコメントをATS上へ入力できるシステムであれば、面接後の情報共有もスムーズになります。
5. 候補者とのコミュニケーション
面接案内、選考結果、追加書類の依頼など、採用活動では候補者とのコミュニケーションが頻繁に発生します。ATSを活用することで、定型メールの送信やステータスに応じた連絡などを効率化できます。
6. タレントプールの構築
今回の求人では採用に至らなかった候補者でも、別のポジションでは採用要件に合う可能性があります。ATSに候補者情報を蓄積しておけば、新しい求人が発生した際に過去の候補者を検索し、再度アプローチできます。これをタレントプール(Talent Pool)として活用することで、毎回ゼロから候補者を探す必要がなくなります。
7. 採用データの分析
ATSでは、採用活動に関するデータを蓄積できます。例えば、
- 応募者数
- 書類選考通過率
- 面接通過率
- 内定承諾率
- 採用までの日数(Time to Hire)
- 採用経路(Source of Hire)
などを分析できます。採用活動を感覚だけで判断するのではなく、データをもとに改善できることもATSのメリットです。
インドネシア企業がATSを導入するメリット
1. 多くの応募者を効率的に管理できる
インドネシアでは、職種によって一つの求人に多くの応募が集まることがあります。すべての候補者をExcelで管理すると、応募者が増えるほど採用担当者の負担も大きくなります。ATSを利用すれば、候補者情報や選考状況を一元管理できるため、多くの応募があった場合でも採用プロセスを整理しやすくなります。
2. 採用業務を効率化できる
ATSでは、応募受付、候補者情報の登録、面接調整、選考ステータス管理など、採用担当者が繰り返し行っている業務を効率化できます。その結果、採用担当者は事務作業だけでなく、候補者との面接やHiring Managerとの採用要件のすり合わせなど、より重要な業務に時間を使えるようになります。
3. 採用スピードを改善できる
優秀な候補者は、自社だけでなく複数の企業の選考を同時に受けていることがあります。社内での書類確認や面接調整に時間がかかれば、その間に他社からオファーを受け、候補者を逃してしまう可能性があります。ATSで選考状況を可視化し、社内の情報共有を迅速化することで、Time to Hireの短縮につなげることができます。
4.Hiring Managerとの情報共有を改善できる
採用はHRだけで完結する業務ではありません。実際に採用する部門のHiring Managerと連携しながら、候補者を評価する必要があります。ATS上で候補者情報、履歴書、面接評価、選考状況などを共有できれば、メールやチャットで情報を何度も転送する必要がなくなります。
5. 採用活動をデータで改善できる
- 「応募者は多いのに採用できない」
- 「面接まで進んでも辞退者が多い」
- 「特定の求人媒体から採用につながらない」
といった問題がある場合、採用プロセスのどこに課題があるのかを確認する必要があります。ATSに蓄積されたデータを分析することで、採用ファネルのどこで候補者が減っているのかを把握し、採用活動の改善につなげることができます。
ATSは履歴書・職務経歴書をどのように処理するのか?
ATSについて、「キーワードが入っていない履歴書は自動的に不採用になる」と説明されることがあります。しかし、すべてのATSが同じ方法で候補者を評価しているわけではありません。ATSによって機能や仕組みは異なります。代表的には、次のような方法があります。
履歴書・職務経歴書の解析(Parsing)
候補者が履歴書・職務経歴書をアップロードすると、システムが氏名、連絡先、学歴、職歴、スキルなどの情報を抽出し、検索可能なデータとして保存します。
キーワード検索
採用担当者が、職種名、業界経験、スキル、言語などのキーワードを指定し、条件に該当する候補者を検索します。例えばインドネシアの日系企業で日本語人材を採用する場合、「Japanese」「JLPT N2」「JLPT N1」「Japanese Speaker」などの条件で候補者を検索することも考えられます。
フィルタリング
勤務地、職歴、学歴、経験年数、スキルなどの条件を設定し、対象となる候補者を絞り込みます。
スコアリング・マッチング
一部のATSでは、企業が設定した採用要件やJob Descriptionなどをもとに候補者をスコアリングしたり、求人との適合度を表示したりする機能があります。ただし、スコアの算出方法や候補者の扱いはシステムや企業の設定によって異なります。そのため、ATSのスコアだけで採用・不採用を判断するのではなく、最終的には採用担当者やHiring Managerが候補者の経験や能力を確認することが重要です。
ATSと人事管理システム(HRIS)の違い
ATSとHRIS(Human Resource Information System)の違いについて疑問を持つ方もいるでしょう。どちらも人事業務で利用されるシステムですが、主な役割が異なります。ATSは「採用前」を管理するシステムです。求人作成から応募、書類選考、面接、内定までの採用プロセスを管理します。一方、人事管理システム(HRIS)は「入社後」を中心に管理するシステムです。従業員情報、勤怠、休暇、給与計算(Payroll)など、入社後の人事業務を管理します。例えば、候補者が内定を承諾して入社する場合、
ATS:応募 → 選考 → 面接 → 内定
↓
HRIS:入社 → 従業員情報 → 勤怠 → 給与 → 休暇 → 退職
という流れで管理できます。ATSとHRISが連携していれば、ATSに登録されている氏名、連絡先、入社予定日、ポジションなどの情報をHRISへ引き継ぐこともできます。これにより、新入社員の情報を人事担当者が再入力する作業を減らし、採用からオンボーディングまでをスムーズにつなげることができます。
ATS導入時に確認したいポイント
ATSを導入すれば、必ず採用が成功するわけではありません。重要なのは、自社の採用課題に合ったシステムを選ぶことです。特にインドネシアでATSを選定する場合は、
- 自社で利用している求人媒体と連携できるか
- インドネシア語・英語など必要な言語に対応しているか
- 応募者情報を検索・管理しやすいか
- Hiring Managerが簡単に利用できるか
- 面接評価をシステム上で管理できるか
- 採用KPIを分析できるか
- HRISと連携できるか
- 個人情報を適切に管理できるか
などを確認することが重要です。機能が多いATSよりも、自社の採用プロセスに合っており、採用担当者やHiring Managerが実際に使いこなせるシステムを選ぶことが重要です。
まとめ|ATSはインドネシアの採用業務を効率化するための基盤
ATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)は、求人管理、応募者管理、書類選考、面接、選考状況など、採用活動に必要な情報を一元管理するためのシステムです。特に多くの応募者や複数の求人を同時に管理する企業では、Excelやメールだけで採用活動を管理することが難しくなります。ATSを活用することで、採用担当者の事務作業を削減するだけでなく、Hiring Managerとの情報共有、採用スピード、候補者管理、採用データ分析などの改善につなげることができます。また、ATSと人事管理システム(HRIS)を連携すれば、採用から入社後の従業員管理までを一貫してデジタル化できます。
ただし、ATSはあくまで採用活動を支援するツールです。採用成功のために重要なのは、適切なJob Descriptionを作成し、採用基準を明確にしたうえで、候補者の経験・能力・適性を人が適切に評価することです。
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