企業が成長するにつれて、従業員に関するデータは増え続けます。氏名や住所などの基本情報だけでなく、雇用情報、勤怠、給与、人事評価、研修履歴など、人事部門が管理する情報は多岐にわたります。こうした従業員データは、単なる人事管理のための情報ではありません。適切に管理・活用することで、人事業務の効率化だけでなく、採用、人材育成、人員配置、人材定着など、経営や人事における意思決定にも活用できる重要な経営資産となります。一方で、従業員データには個人情報や給与情報など機密性の高い情報も多く含まれるため、正確性やセキュリティ、法令遵守にも十分な注意が必要です。そこで重要になるのが、Employee Data Management(従業員データ管理)です。
本記事では、Employee Data Managementの基本的な考え方から、管理すべき従業員データの種類、重要性、具体的な管理方法、導入時のポイントまで分かりやすく解説します。
Employee Data Management(従業員データ管理)とは?
Employee Data Management(従業員データ管理)とは、企業が保有する従業員データを、収集・保存・整理・更新・活用するための一連の管理プロセスを指します。管理対象となるデータには、氏名や住所、電話番号などの基本情報だけでなく、職務経歴、人事評価、勤怠状況、給与、報酬、研修履歴など、従業員に関するさまざまな情報が含まれます。Employee Data Managementでは、単にデータを保存するだけでなく、次のような状態を維持することが重要です。
データの正確性と一貫性を保つ
従業員データに誤りや重複、不整合があると、人事業務だけでなく給与計算や経営判断にも影響する可能性があります。例えば、勤怠データと給与データを連携させることで、手入力によるミスを減らし、より正確な給与計算を行うことができます。
データを安全に保護する
従業員情報には、住所、銀行口座、給与、納税者番号など、機密性の高い個人情報が含まれます。そのため、アクセス権限の設定やデータ暗号化など、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。
必要なときに活用できる状態にする
データは保存するだけでは十分ではありません。必要な情報を迅速に確認でき、分析やレポート作成、人事・経営判断に利用できる状態にしておくことが重要です。
法令・規制を遵守する
従業員データの管理では、各国・地域の個人情報保護やデータ保護に関する法令・規制に対応する必要があります。インドネシアにおいても、個人データ保護に関する法令を踏まえ、適切なデータ管理体制を整えることが求められます。適切なEmployee Data Managementを行うことで、人事部門の日常業務を効率化できるだけでなく、蓄積されたデータを活用し、より戦略的な人事施策につなげることができます。
Employee Data Managementが重要な4つの理由
従業員データは、企業規模が大きくなるほど管理が複雑になります。複数のExcelファイルやスプレッドシート、紙の書類、担当者ごとのPCなどに情報が分散している場合、データの不整合や更新漏れ、情報漏えいなどのリスクも高まります。Employee Data Managementが重要な理由として、主に次の4つが挙げられます。
1. 人事業務の効率を向上できる
従業員データを一元管理することで、人事担当者が複数のファイルやシステムから情報を探す必要がなくなります。入社手続き、給与計算、勤怠管理、休暇管理、人事評価などに必要な情報を一つのシステムから確認できるため、人事業務をより効率的に進めることができます。また、データを各業務と連携することで、同じ情報を何度も入力する作業や、転記によるミスの削減にもつながります。
2. データに基づいた意思決定ができる
正確に整理された従業員データは、人事や経営における意思決定を支える重要な情報となります。例えば、
- 採用計画
- 人員計画(Manpower Planning)
- 人材定着(Retention)
- 人材配置
- 人材育成
- 人件費計画
などに活用できます。人事評価や離職率などのデータを分析することで、どの部署で離職が多いのか、どのような人材が高い成果を出しているのか、どのような研修が効果的なのかなどを把握しやすくなります。経験や感覚だけに頼るのではなく、データに基づいた人事判断ができることは、Employee Data Managementの大きなメリットです。
3. 従業員体験(Employee Experience)を向上できる
従業員データが適切に管理されることで、従業員自身の利便性も向上します。例えば、Employee Self-Service(ESS)を利用すれば、従業員自身が住所や連絡先などの個人情報を更新したり、休暇を申請したり、給与明細を確認したりできるようになります。人事担当者へ毎回問い合わせる必要がなくなるため、従業員にとってもスムーズな人事手続きを実現できます。給与や休暇情報などが正確に管理されることは、会社に対する信頼にもつながります。
4. コンプライアンスを強化できる
企業には、従業員の個人情報を適切に管理する責任があります。従業員データは安全に保管し、権限を持つ担当者だけがアクセスできるようにする必要があります。また、保管期間や削除方法についても、法令や社内規定に基づいた運用が必要です。適切なEmployee Data Managementを行うことで、情報漏えいや不正アクセス、データ管理上の不備などによるリスクを軽減することができます。
管理すべき従業員データの5つの種類
従業員データというと、氏名や社員番号などの基本情報をイメージするかもしれません。しかし、実際に企業が管理する従業員データは非常に幅広く、企業の成長とともに管理する情報も増えていきます。代表的な従業員データは、大きく5つに分類できます。
1. 個人情報
採用活動や入社手続きの段階で収集される、最も基本的な従業員情報です。
主なデータ例
氏名、住所、生年月日・出生地、電話番号、メールアドレス、婚姻状況、緊急連絡先など。
主な用途
人事・労務手続き、社内連絡、緊急時の連絡などに利用されます。
2. 雇用情報
従業員の現在の雇用状況や、社内におけるキャリア履歴に関する情報です。
主なデータ例
役職、職種、所属部署、入社日、雇用形態、上司、異動履歴、昇進履歴など。
主な用途
組織体制の管理、人員配置、キャリア管理、サクセッションプランなどに活用されます。
3. 勤怠データ
従業員の勤務状況に関する情報です。
主なデータ例
出退勤時刻、勤務時間、残業時間、残業手当、有給休暇、病気休暇、その他の休暇取得履歴など。
主な用途
給与計算、労働時間管理、休暇管理、コンプライアンス確認などに利用されます。
4. 給与データ
給与や税金、社会保険などに関する情報で、従業員データの中でも特に機密性が高い情報です。
主なデータ例
銀行口座情報、NPWP、BPJS Ketenagakerjaan、BPJS Kesehatan、基本給、各種手当、控除、税金など。
主な用途
給与計算を正確かつ期限どおりに実施し、税務や労務に関する各種手続きへ対応するために使用されます。
5. パフォーマンスデータ
従業員の成果や能力、育成状況に関する情報です。
主なデータ例
人事評価結果、目標達成状況、上司や同僚からのフィードバック、研修履歴、保有資格、育成計画など。
主な用途
優秀人材の把握、昇進・昇給、人材配置、研修計画、人材育成などの判断に利用されます。
特に人事評価や研修履歴については、企業によって体系的に管理されていないケースもあります。
こうした情報を蓄積することで、従業員一人ひとりの成長を継続的に把握しやすくなります。
Employee Data Managementを構成する4つの要素
従業員データを適切に管理するためには、大きく「収集」「保管」「更新」「活用」という4つのプロセスが必要です。
1. データの収集
Employee Data Managementは、必要な従業員情報を収集することから始まります。採用時の応募情報や入社時のオンボーディングフォーム、HRIS、Employee Self-Service(ESS)などを活用することで、効率的に情報を収集できます。一方で、必要以上に個人情報を収集するべきではありません。どの情報を、何のために収集するのかを明確にし、自社の人事業務に必要なデータを適切な方法で取得することが重要です。
2. データの保管
収集したデータは、安全かつ一元的に保管する必要があります。スプレッドシートや担当者ごとのPC、紙の書類などにデータが分散すると、更新漏れやデータの重複、紛失、情報漏えいなどのリスクが高まります。HRISやクラウド型の人事システムを活用することで、従業員データを一つのプラットフォームにまとめ、必要な担当者が適切な権限のもとでアクセスできる環境を構築できます。
3. データの更新・管理
従業員データは、一度登録すれば終わりではありません。住所変更、結婚、異動、昇進、給与変更、研修受講など、従業員に関する情報は常に変化します。そのため、企業はデータを継続的に更新し、常に最新の状態を維持する必要があります。HRISやESSを活用すれば、従業員自身が情報を更新したり、人事部門がリアルタイムで変更内容を確認したりすることも可能です。
4. データの分析・活用
Employee Data Managementの最終的な目的は、データを保存することではなく、企業の意思決定に活用することです。例えば、
- 離職率の分析
- 人材定着施策の検討
- スキルギャップの把握
- 研修効果の分析
- 人員配置
- 人員計画
- 人件費分析
などに活用できます。従業員データを継続的に蓄積することで、これまで感覚的に判断していた人事課題を、データから分析できるようになります。
Employee Data Managementを効果的に導入する6つのポイント
Employee Data Managementを効果的に運用するためには、単にHRISを導入するだけでは十分ではありません。データの収集方法や管理ルール、アクセス権限などをあらかじめ整備しておくことが重要です。
1. データの収集・整理方法を決める
まず、企業内でどのような従業員データを収集しているのかを整理しましょう。採用から入社、異動、評価、給与、退職まで、Employee Lifecycleの各段階で発生するデータを確認します。そのうえで、データのカテゴリーや保存場所を決め、担当者によって管理方法が異ならないよう、一定のルールを設けることが重要です。
2. 明確なデータ管理ポリシーを策定する
従業員データを適切に管理するためには、社内のルールを明確にする必要があります。例えば、
- 誰がデータの収集・更新を担当するのか
- 誰がどのデータへアクセスできるのか
- どのような方法でデータを収集するのか
- データをどの程度の期間保存するのか
- どのような方法で削除するのか
- セキュリティ事故が発生した場合にどう対応するのか
などを定めます。また、データ管理ポリシーは、個人情報保護などに関する関連法令や規制にも対応している必要があります。
3. データを一元管理できるHRISを導入する
従業員データを複数のExcelファイルや紙の書類だけで管理していると、情報が分散しやすくなります。そのため、従業員数が増えてきた企業では、HRIS(Human Resource Information System)を活用してデータを一元管理することが有効です。例えば、Peoplyee HRISでは、従業員に関するさまざまな情報を一つのシステム上で管理できます。勤怠、休暇、給与などの情報を連携させることで、人事担当者の手作業を減らし、入力ミスやデータの不整合を防ぐことにもつながります。
4. Employee Self-Service(ESS)を活用する
Employee Self-Service(ESS)とは、従業員自身が人事に関する情報や各種手続きを確認・申請できる仕組みです。例えば、
- 個人情報の更新
- 休暇申請
- 各種申請
- 給与明細の確認
- 社内通知の確認
などを従業員自身で行うことができます。人事担当者が一件ずつ情報を更新したり、従業員からの問い合わせへ対応したりする必要が減るため、人事業務の効率化につながります。
5. 定期的にデータを監査する
従業員データは、定期的に内容を確認する必要があります。古い情報や重複データ、不正確な情報が残っていると、人事業務や分析結果にも影響します。そのため、
- 重複データがないか
- 古い情報が残っていないか
- 退職者データが適切に管理されているか
- アクセス権限が適切か
- データ管理が社内規定や法令に沿っているか
などを定期的に確認しましょう。
6. データを人事・経営の意思決定に活用する
Employee Data Managementでは、データを整理して終わりにしないことが重要です。例えば、離職データを分析することで、どの部署や職種で退職者が多いのか、その原因としてどのような傾向があるのかを把握できます。また、人事評価や研修データを分析すれば、現在の組織に不足しているスキルを把握し、必要な研修を計画することもできます。給与や人員データを活用すれば、今後の採用人数や人件費をシミュレーションし、より精度の高いManpower Planningにつなげることも可能です。Employee Data Managementは、人事管理を効率化するためだけの仕組みではありません。データを企業の意思決定に活かしてこそ、その価値を最大化できます。
Employee Data ManagementにHRISを活用するメリット
従業員数が少ない企業であれば、Excelやスプレッドシートでも一定の管理は可能です。しかし、従業員数が増え、勤怠、給与、休暇、人事評価など管理する情報が増えてくると、複数のファイルを人手で管理することには限界があります。そこで有効なのがHRISです。
従業員データを一元管理できる
HRISを利用すれば、従業員の基本情報から勤怠、給与、休暇、人事評価などを一つのシステムで管理できます。データが分散しないため、必要な情報を探す時間を削減できます。
入力ミスやデータの不整合を減らせる
異なるExcelファイルへ同じ情報を繰り返し入力していると、更新漏れや転記ミスが発生しやすくなります。データを一元管理し、各機能を連携させることで、こうしたミスを減らすことができます。
アクセス権限を管理できる
従業員データには、給与や個人情報など、担当者によって閲覧できる範囲を制限すべき情報があります。HRISでは、ユーザーごとにアクセスできる情報を設定することで、より安全なデータ管理が可能になります。
人事データを分析しやすくなる
従業員データが一つのシステムに蓄積されることで、人員数、勤怠状況、離職率、給与、人事評価などを分析しやすくなります。人事担当者がデータを集計するためだけに多くの時間を費やす必要がなくなり、人事施策の検討や改善により多くの時間を使えるようになります。
まとめ
Employee Data Management(従業員データ管理)は、単に従業員情報を保存するための仕組みではありません。従業員データを正確かつ安全に管理し、人事業務を効率化するとともに、経営や人事の意思決定へ活用するための重要な基盤です。企業が成長し、従業員数や管理するデータが増えるほど、Excelや紙の書類を中心とした管理では、データの分散、更新漏れ、入力ミス、セキュリティなどの課題が生じやすくなります。まずは、自社でどのような従業員データを管理しているのかを整理し、収集方法、管理ルール、アクセス権限を明確にすることが重要です。さらにHRISを活用することで、従業員データを一元管理し、勤怠・給与・休暇などの人事業務と連携させることができます。従業員データを「保管する情報」から「経営に活用できる情報」へ変えていくことが、これからの人事部門には求められます。
Peoplyee HRISでは、従業員情報、勤怠管理、休暇管理、給与計算などの人事業務を一つのシステムで管理することができます。インドネシアにおける従業員データ管理やHR業務の効率化を検討されている企業は、ぜひPeoplyee HRISをご活用ください。




